童貞を奪った責任




 人様の御宅にお邪魔する際は、靴を揃えて且つ粗相の無い様に....とは立前である。逃走経路の確保を促す。




 コンクリート塀を抜ければ、日本庭園の様な趣のある広い庭が広がり、そしてこのコンクリートとは不釣り合いな立派なお屋敷の全貌が姿を現す。




「若頭....って、え?」


 玄関を開けば先程と同様に、真横の若頭から視線を私に向ける強面たち御一行。



 さっきから何なのよ。まるでお化けを見ているかの形相。




 そりゃこっちも、こんな非現実的な場所に連れてこられて、数あるセフレ君の中でも一番のガタイの良さを誇る真島君でさえ、ここのオッサン連中に適うはずがないって本能的に危険信号を放つ。




 けれど、そんな彼等に物怖じせず、我が物顔で突き進む若頭。



 最奥の部屋の襖を開けば、寝室なのだろうか布団が一組敷かれており、そのまま私は押し倒された。






「えーっと、あの、退いてくれませんかね。」



「無理、」




・・・ですよね~。何故か妙に納得のいく展開。




 照明に照らされた男は、四つん這いになり私を囲う。片腕で引き抜くネクタイは、しゅるりと音を立てながら取り払う。






 首元のボタンを外した男は、ゆっくりと顔を近づけ、吐息が掛かる寸での場所で口を開いた。





「やられっ放しも面白くない。」



 低くて、セクシーな美声に酔い痴れてる暇などなく塞がった唇。


 初めっから、捕まえる気満々で侵入してくる舌が、逃げ回る私に絡まって、引っ張って甘く溶かしていく。





 二度目は無い。そう誓って、ワンナイトラブした相手は、どうやら童貞を奪われて根に持っているらしい。