そんな末恐ろしい言葉を女性に落としたのだった。




 今のご時世に、職を失うという恐怖を彼自身分かっていらっしゃるのかしら。




「申し訳ございません。それだけは御勘弁を....」



 なんて、泣きながら社長くんに頭を下げる女性が不憫に思ってしまう。


 だけども、流石は冷徹人間。



「妻に粗相をしたんだから当然の報いだ。」


「....わ、わたしは、てっきり社長のストーカーかと、思って、」





....ぬ⁉︎なんじゃそりゃ。さらっと悪口を言われた気がして、女性を見れば、チラ見してきた女性と目があって、バツが悪そうに顔を逸らされた。



 いや確かにね、私も悪いよ?服装はどう見ても社長夫人って感じじゃ無かったしね。

 挙動不審だったし。




「言い訳は要らないから、余計なお世話。俺が結婚したの知らないの?」



 ほら、と左手を見せる素振り。薬指には結婚指輪が嵌められており、見せびらかすと私の肩を抱いて引き寄せた。




「そ、そんなっ....私は、てっきり女避けかと....。」


「やっと手に入れた好きな女をストーカー扱いしやがって、ーーーーあんたウザイよ?」





 態とらしく見せつける様に、私にべったりと貼り付く旦那。



 実はストーカーしてたのは、私ではなく詠斗の方。



 私の旦那様は、私以外の女性は眼中に無い。どころか、平気で無下にしてしまうくらいに冷酷だ。


 大きなお世話と称した受付嬢さんの行動から読み取れるものとすれば、少なからず詠斗に恋してたのかな?



 


「次来る時は、絶対に誰か付けろ。いくらお前が、そのダッセーTシャツ着てようが、美人は隠せないだろ。他の野郎どもに見られてると思うと腹が立つよ。」




 嫉妬深い旦那様は、弁当と共に私も食う。



 

 社長室で可愛がってもらった後、帰りのエントランスには、先程の受付嬢は居なくなっていて、代わりの人員が居た。



 あの人が本当にクビになったのかは定かではない。