童貞を奪った責任



 痛みに歪んだ表情、若干の涙目を浮かべた姐さんは、「大丈夫、大丈夫....。」と、正気を保つ様に、指を圧迫させた。


 程なくして止血に成功すれば、直ぐに包帯を巻きつけ手当てを施す。

 そんな最中に、姐さんが不意打ちでニタリと笑った気がしたのだが....。


「どうしたんですか。」

「いや、映画の回想シーンを思い出したの....。」


 何の?と尋ねてみると、それはこの世界特有の事を指す。


 最近じゃ見かけなくなった指を詰める行為。


「天竜さんは、生で見た事あるんですか?」

「あるっちゃあるんすけど、今じゃ有り得ないですからね。」

「そうなんだ....。」

「さっ、姐さん。残りの切り物どうします?もし厳しい様でしたら、自分やりますんで。」


 なんだか物寂しそうな姐さんは、口を尖らせる。

 残りの作業を意地でも一人で終えたいらしく、その姿を見届けることにした。