大人になって更に綺麗になっていた杏。
一目見て、走馬灯の様に昔の思い出を呼び覚ました。
俺の自慢だった彼女。
綺麗なのに、気取らなくて、とても良い女だった。
「ずっと謝りたかった。本当にごめん。」
簡単に許してくれるとは、到底思ってない。
だけど、話す機会をくれた杏。
「最初から私は、優磨という....あの天使みたいな男の子が幸せになることをずっと願ってたんだと思うよ....。」
傷付けられた身の筈なのに、俺の事を心配してくれて、思わず目頭が熱くなる。
幸せにする役目は私じゃなかった。とでも言いたげに微笑んだ杏。
それはお互い様だ。
俺もお前を幸せにする事は叶わなかった。
伊丹家までの距離が、俺と杏の最後の時間になるだろう。



