自然消滅と呼べば良いのか、それとも避けられない別れだったのか。


 あの時、杏が実家から出て、俺の前から消えた事は正解だったと思う。



 気持ちの整理が付かなかったから、それに....どんな顔して、杏に会えば良いのか分からなかった。


 ごめん。で済む話では無いからだ。


 沢山の人の期待を裏切った俺は、逃げる様に田舎から抜け出した。


 だけど、いつも俺の心の中で、綺麗な姿の儘の杏と、酷く気付いた杏が支配する。



 彼女の事は忘れてはいけない。


 片付けなくてはならない問題だったのだ。



 清算を終えなければ、俺は一生、君に恋する男である。

 そして、君に盛大に振られたい男でもあるのだ。


 未練が無いと言ったら嘘になるが、俺には彼女を幸せにする事は叶わない。



 

「....貴方、同窓会の御便り届いてるわよ?」


 出国前最後の年末、俺はきっと当分帰国する事は叶わないだろう。


 俺と杏の事情を知っても尚、結婚してくれた妻。

 産まれたばかりの可愛い娘。


愛衣(あい)も連れて、行こう。」


 
 元カノに再会出来た事。

 俺たちの知らない互いの道筋。


 再び結び付く事は無かったけれど、お互いが幸せになれる相手を見つけられたんだ。