「あんた、薄情ね…。忘れてたの?」

「え?いや覚えてた。覚えてたって」

嘘おっしゃい。今忘れてたでしょ。

別に良いわよ。慣れてるのよ、誕生日忘れられること。

如何せん、こんな年度末に生まれたものだから。

皆新学期に気を取られて、私の誕生日を忘れちゃうのよ。

3月生まれの、悲しき性。

私の誕生日を忘れないで。

「星ちゃん、今年は何が欲しい?」

「そうだな〜。…二人のセンスに任せる」

「えぇ〜、難しい」

「『何でも良い』が一番困るんだよね〜」

分かる分かる。何でも良いって言われると、逆に困るよね。

でも私は敢えて、何でも良いと言う。

ふっふっふ。私の為にあれこれ考えると良い。

大丈夫だよ。友達からもらったものなら、何でも喜ぶから。

…すると、そこに。

「唯華さん、お待たせしました」

「おっ。お帰り〜」

図書室に本を返しに行っていた結月君が、教室に戻ってきた。

「じゃ、一緒に帰ろっか」

「はい」

私は机に広げていた雑誌を、学生カバンに収めた。

「じゃあね、真菜、海咲」

「バイバイ、星ちゃん」

「また明日ね〜」

二人の女友達に手を振り。

私は結月君と共に、教室を出た。

今日も一緒に帰るんだよ。良いでしょ?

ラブラブだぁ。