…翌日。

の、昼休み。

「星ちゃん。学食行こー」

と、いつも通り真菜と海咲が声をかけてきたけど。

残念ながら、今日はそのお誘いには乗れない。

「ごめん。今日、私お弁当なんだ。教室で食べるから」

「え?珍しいね、星ちゃんがお弁当なんて」

いつもは学食か購買だもんね。

でも、今日は違うのだ。

新しいことに挑戦してみようと思ったから。

「うん、ちょっとね」

「ふーん…。じゃあ、二人だけで行ってくるわ」

「行ってらっしゃい」

私は、学食に向かう二人を見送り。

そして、学生カバンの中から、お弁当の巾着袋を取り出した。

…よし。

じゃ、私は。

「…結月君っ」

僅かな勇気を出して、私は結月君に声をかけた。

「は、はい?」

驚いたような顔で返事をする結月君。

それが、自分の彼女に声をかけられたときの反応か。

そんなにびっくりしなくても良いものを。

「お昼、一緒に食べよ」

「え…?」

「結月君、お弁当なんでしょ?」

「そうですが…。星野さんは、いつも学食では…?」

いつもは、そうなんだけどね。

でも今日はちょっと、趣向を変えてみたって言うか。

新しいことに挑戦してみたんだよ。

結月君を見習ってね。

「今日はお弁当にしてみたんだ。一緒に食べよう。…嫌?」

「あ、いえ…。嫌じゃないですよ。どうぞ…」

「じゃ、遠慮なく…。ここ、座るね」

私は、自分の椅子を持ってきて。

結月君の机の前に置いて、向かい合うようにして座った。

こうして学校で、昼休みに二人でお弁当を食べるなんて。

初めての体験だね。

…って言うか…。

結月君とやることなすこと、全部、お互いにとって初めてのような気がするよ。

まぁ、それも悪くないじゃない。

どんな経験でも。

君と一緒に積み重ねていけば、いつかきっと、この日を振り返ったとき。

「あぁ、こんなこともあったなぁ」って思い出して笑えるよ。