私は、のろのろとスマートフォンをタップした。

今度は何?

真菜や隆盛達との、グループEINLにメッセージが来ていた。

『今日のお疲れ会だけど、何時に集まる?』とのこと。

…お疲れ会…?

って何のことだ、と思ったけど。

そうだ、思い出した。

今日、真菜達とカフェに集まって、パフェを奢ってもらう約束してたんだっけ。

結月君とお別れした記念に。

罰ゲームが終わった記念に。

今となって思えば、どれほど馬鹿げた話だろう。

結月君の蔑んだ顔が忘れられなくて、私はぎゅっと唇を強く噛み締めた。

…無理だ。

お疲れ会なんて行けない。

どの面下げて、行けば良いのか。

何て言って、真菜達に説明するのか。

「結月君は罰ゲームだってことに気づいてたらしくて、散々馬鹿にされたよ」って言えば良いの?

「私達は、とんでもない馬鹿だってことが分かったよ」って言えば良いの?

どんな顔して?

…無理だ。そんなこと出来ない。

そもそも、こんなくちゃくちゃの顔を、誰にも見せられない。

恐ろしくて鏡を見られないけど、酷い顔をしていることは分かる。

こんな情けないところを誰にも見られたくない。

本当のことなんて、とてもじゃないけど言えない。

私は少し考えて、スマートフォンをタップした。

『ごめん。昨日の夜から風邪引いたみたいで、今朝も熱が出てるから、今日は行けない』と書き、送った。

仮病なんて使ったと知れば、また結月君に馬鹿にされるんだろうな。

潔く、本当のことを仲間に話すことさえ出来ない臆病者と。

そう罵られるんだろう。

それが分かっていて、でも、やっぱりどうしても行けなかった。

仲間達からは、すぐに返信が来た。

『え?風邪って、星ちゃん大丈夫?』

『じゃあ延期だね。お大事に〜』

『クリスマス当日に風邪とか、マジお疲れ』

『気にせず、ゆっくり休めよ』

真菜、海咲、正樹、隆盛の順に、そんなメッセージが届いた。

本当は熱なんてない癖に。風邪なんて引いてない癖に。

卑怯な私は、友達をも騙している。

…君の言う通り、最低な人間だ、私は。

でも、今更どうしたら良いの?

許してもらえるものなら、何でもするよ。

だけど、どうやっても許されないことをしてしまった私は。

今更その罪に気づいた私は。

どうやって、君に罪を償えば良いの?

私には分かんないよ…。…馬鹿だから。

「分かんないよ…結月君…」

呟いてみても、誰一人この声に応える者はいなかった。