「みー君ってば、外でああいうのはやめてほしい。」



 時刻夜八時を過ぎた頃、某マンションの一室【一条】にて、食卓を囲む男女在り。


 湯気が立つお椀を口元に持ってきて啜り始めた女は、自身のだらしの無い邪魔な前髪を耳に掛けた。


 見えてきたのは、やっぱり冴えない顔のパーツ。

 それに比べて、目の前に対面する男の容姿は、王子様風のイイ男。


 清潔感漂う絶妙な短髪、キリッと整った眉毛、目元はくっきりとし、鼻筋、唇の形はセクシーで、ザ・出来る男の印象を与える。


 そんな男が、目の前で味噌汁を啜る女に向ける視線は、なんて事だ....だらしがない。


(はな)ちゃん照れてるの?」


 極々冷静に伝えた筈なのに、どうやらお見通しの様だ。


 甘々とした王子様の台詞に、地味姫様は昼間の光景を思い出すと、恥ずかしさの余り、急激に顔が真っ赤に染まる。


 そして、汁物で噎せ返す。



「っな、そうじゃなくって‼︎」

「いいじゃん。俺、仕事中に花ちゃんの顔見れて凄く嬉しかったんだよ?」



 黙々と食事を続ける嫁に対し、旦那様はその愛しいお姫様の食事風景をまじまじと見つめるのです。



「あの後ね、会社内で色んな人に結婚したんですか?って問われてね、俺ほんとーに花ちゃんをお嫁さんに出来たんだ〜って実感しちゃったよ。本当幸せ....花ちゃん。俺と結婚してくれてありがとう。」


「....どういたしまして、」

「ご飯食べたら一緒にお風呂入ろうね?」

「それだけは勘弁して!」

「えーケチだな〜。まあ絶対に一緒に入るけどね。」


 ここは新婚さんの愛の巣。時間が許す限り、妻を愛でたい旦那様は、しつこいぐらいに密着する。


 仕事の疲れを癒やしてくれるのは、彼にとって特別な女神様。




 一条 美郷と、先日入籍しました一条 花がお送り致します。



「ちょっと、みー君⁉︎変なとこ触らないで‼︎」

「無理だよ花ちゃん....こんなに魅力的な女性が裸なんだもの....そりゃ我慢出来ませんよ。」



 結局一緒に入る事になったお風呂では、二人の愛のチョメチョメが繰り広げられた。


 反響する嬌声が妙に色っぽい....水も滴るいい男。

 そして、淫らに揺れる小動物は、独特のフェロモンを出して、何万倍にも色気を放出する。


 彼女の良さは旦那しか知らない....。


 みんな花の事を『良い子そうだね。』と当たり障りの無い評価をする。

 
 こんなに可愛く啼く女なのに....。



(まあ知らなくていいよ?てか教えてやんないし。)