それでも尚、俺から幸せを奪おうというものなら....。
早朝、花が起きる前に収納部屋を漁って、厳選に厳選を....いや、ぶっちゃけどの花も可愛いっ。
俺は、持ち前のプレゼン能力で、目の前の馬鹿社長を黙らせようと、花とのツーショットと、盗撮した不意打ちの可愛い花の写真を鞄いっぱいに詰めてここまで乗り込んだ。
盗撮に関しては、花にバレたら、きっと殺され....いやいや、もう俺たちは赤の他人では無い。夫婦になったのだから、夫の俺を滅多刺しなんかする筈が無いっ!
「とりあえず俺の妻が如何にいい女で、世界で一番可愛いかをプレゼンしたいと思います。それでは、こちらからご覧下さい。」
俺が結婚に至るまでの昔話を長々とした後、呆気に取られていた社長に手渡したのは、秘蔵写真。
「こちら、私の妻の花ちゃんです。生後二週間の天使ですよ。見て下さい!このつぶらな瞳をッ‼︎そしてお次は、寝返りをうって笑顔を魅せる花ちゃん。そしてそして....。」
結婚の挨拶をしに、花の実家に行った際に、義母さんに頼んで焼き増しさせてもらった俺の知らない花の幼少期。
花の目を盗んで、こっそりと集めたメモリアル。
次から次へと、社長の手元へと向かう花の成長記録。
「あ、これなんかどうです?私とのツーショットを嫌がる花ちゃん。小学校の行事で、カメラマンさんが、一人で居た花ちゃんを撮ろうとした時に割り込んだんですよ!そしたら花ちゃん何て言ったと思います?」
『今の写真絶対消して下さい。』だってさ....。そんなのさせる訳ないじゃん。
初めて君の隣で写ったものを安易と無かった事にしたくなかった。
「そして、初めて撮ったプリント倶楽部っ!俺がキスプリ撮りたいって言ったら、殴られた一部始終がこちらになります。」
カウントダウンの間際に、花に無理矢理迫って、問答無用で拳が飛んできた。
そして、次のショットは、俺が殴られた頬を押さえて痛がるフリをしてるところ。
ぜーんぜん痛く無かったけど、こんなコマもアリかな?ってね。
「ではでは、とっておきの一枚を社長にだけ....特別ですよ?」
俺はここぞとばかりに、調子付いていた。
人に売り込む事は好きだ。でも、もっと大好きなのは、推しの花ちゃんについて熱く語る事だ。
普段はスケジュール帳の表紙裏に、ラミネートまでして挟んでる貴重な一枚。
初めて君を抱いた日....疲れ果てた花が、すやすやと眠りにつく姿....。
布団から肩が飛び出していて、その下は全裸である。一歩間違えば、リベンジポルノ....。
もうこの際だから、サービスで見せちゃう!
それを社長へと差し出そうと思った時だった....。
突如鳴り響いた内線電話。
『一条係長代理の奥様がお見えになってます....。』
(....は?なんで、花ちゃんが⁉︎)



