それから美郷は、矢鱈と花に絡むようになる。


 授業中に、二人一組を作る際は、決まって美郷争奪戦が勃発するが、それを掻い潜る一条少年による一条少年だけの二条 花争奪戦。


「花ちゃーん、俺と組もう?」

「嫌だ。」

「即答⁉︎」





「ちょっと、美郷君ってば、二条さん組みたくないみたいだから私と組もうよ!」

「いや、俺は花ちゃんがいいな〜。」

「なんで、そんな子がいいの?」

「だって俺、花ちゃん好きだし....」


 今の今まで、口にする事は無かった。こんなタイミングで告白する花への気持ち。

 言った本人は、至って普通。


 だがしかし、花含め、周りは....キュンっ‼︎‼︎




 少年一条は、イケメンってやつである。これはお忘れなき様ヨロシク。




(美郷くんが、転校生に告白した!)



 
「で、花ちゃんどーする?」

「な、なにが⁉︎」

「だから、この課題についてだよ〜。」


 あ、そっちね。と、花は恥ずかしさで赤面し、すっかり凝り固まった顔面をそっと隣の席へと向けた。


 また奴は、自分と目線を合わせる様に、腰を丸めて屈んでいた。


 交わる視線。誰だって惚れ惚れしてしまう完璧な容姿。


 甘ったるい声が、この男と合っている....。


「いや、組むなんて一言も言ってないし!」

「え〜....そこは流されてよ〜。」





 嫌よと拒む花の心情は、美郷に想いを寄せる女子達に、八つ裂きにされるのでは無いかと言う恐怖のみ。


 自分みたいな地味な女じゃ釣り合わない。それを自覚している花は、美郷を拒むのだ。



「ま、とりあえず今日だけ!」


 ちらりと前髪の隙間からキョロキョロ見渡す。

 どんな睨みを効かせてきているのか、恐る恐る....だが、そんな不安は一気に吹き飛んでしまう事となる。



(....早く頷きなさいよ!こんなに積極的なのよ⁉︎)


 何故か、クラスメイトは応援ムードだった。