一条 美郷は、所謂出来る男ってやつだ。それも()が付く程の。

 どんなに難攻不落な商談も、彼に掛かればなんのその。


「いや~初めから君に担当してもらってれば、こんなに事を荒立てる必要も無かったのにな~。」

「それは部下の教育が不十分だったと言わざるを得ません。」

「いやいや、それより一条君って結婚しないの~?」

「そうですね~....時が来ればって感じですかね。」

「ってことは、まだウチの娘を紹介しても問題ないよね~。」

「またまた~。お嬢さんって僕よりも一回りは歳が離れてますよね?」


 他の同僚が門残払いされていた企業も、一条氏が介入すれば、あっという間に打ち解けてしまう。

 彼は魔法使いなのか?それとも、その美貌を振り撒き誘惑する魔族なのか。
 
 噂によれば、名家の出だとか。最終学歴は東大出だとか....。


 今の会社には、社長直々に一条氏を引き抜いてきたんだとか....。

 突如現れたサラブレットは、ルックス・ポテンシャル共に申し分なし。

 誰もが嫌がる仕事を真っ先に引き受け、誰もが成功させたい大きい商談を確約させる。

 縁の下の力持ちでもあり、営業部を引っ張る頼もしい存在なのだ。




「では、社長。それなら私は、会社を辞めますから。」



 そんな一条さんが結婚した。

 だけど、彼を射止めたい女性は山程居るのだ。

 生憎と、妻の容姿が彼と釣り合いを持たぬと周囲が知れば、こういった陰謀が渦巻く。

 超ハイスペックナイスガイを欲する輩には、それ相応の対処を....。




(....一条さん、会社辞めるってマジっすか?)