冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする

「このお守りは結局使わずに済んだな……」

胸もとに視線を落とすと、ワンピースの襟に隠れて駆さんの結婚指輪が見えた。
何か変なことをされたときは、いつでもこれをだせばいいと頭の端にあり、駆さんの『いつもで駆けつける』という言葉がすごく心強かった。

(ちゃんとお礼を言って、指輪は返そう)


「――ただいま、戻りました」

玄関の扉を開け、呆気にとられる。
家の電気は真っ暗で、家にいると思っていた駆さんの気配を感じない。

「お出かけ中かな。お休みだし」

少しだけ悲しい気持ちになっているのはなぜなんだろう。
根拠はないけれど、当然駆さんは家にいると思い込んでいた。

(いつでも駆けつけてくれるって言ってたから?)

『結局私の連絡は来ないと思って、出かけることを選んだんだ』――と、意地の悪い考えが頭をよぎり、自己嫌悪に陥った。
駆さんは彼氏でも保護者でもないし、ただの同居人なのに。
そこまで求めるのは見当違いだ。
分かっているのに、なぜか胸がもやもやする。

(私、やっぱりおかしい)

とさっとソファに腰かけて、思わず大きなため息を吐く。
ずっと誤魔化し続けていたけれど、認めざるを得ない。

私の頭の中は、駆さんのことが四六時中ある。
仕事をしている時も、家に居る時も。
そして合コンの時も、洋服を選んでいる時も。
今だって――。

彼が私に向けてくれるようになった笑顔を思い出して、なんだか胸が切なくなった。

「私、もしかして駆さんのこと……」

自分の気持ちを確信したその時、ガチャッと玄関の扉が開く音が聞こえてきた。

(か、帰って来た⁉)

ちょうど張本人のことを考えていたから、ガチガチに緊張する。
姿勢を正してリビングの扉を見つめていると、かすかに駆さんの声が聞こえてきた。

「有紗、今日はありがとう。おやすみ」