その後グリーフィングを済ませ、乗客の搭乗より二十分ほど早く機体へと乗り込む。
『――皆様おはようございます。この飛行機はサクラ日本ライン、サンフランシスコ行き、110便でございます。
当機の機長は五十嵐、私は客室を担当します菅原でございます。御用がございましたら遠慮なく客室乗務員にお知らせください。間も無く出発いたします』
噂の中心にある菅原チーフのアナウンスが終わり、定刻の11時37分に220人を乗せたSFO110便は出発した。
機体が一定の高度に到達し、水平線に保たれたところでベルトサインが消灯する。
ここからが勝負だ。
私たちCAはすぐに機体後方にある機内食や飲み物が保管されているギャレーへと移動し、急いでエプロンに着替える。今からお客様にサービスを提供するまでのわずかな時間が、目が回るほど忙しい。
「村瀬さん、すぐにCクラスにテイクオーダーして」
「かしこまりしました」
菅原チーフの指示に従い、本日担当するビジネスクラスへと向かう。
平日の早朝の便ということで、ビジネスで利用される乗客が圧倒的に多い。集中を必要とする作業をしていたり、新聞を読んでいたりと落ち着いた印象だ。
しかし――。
「君、いつまで待たせるんだよ」

