冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする


まったくの初耳でとりあえず耳を傾ける。
私たちの直属の上司である菅原チーフパーサーは、客室乗務員の鏡のような人だ。
百七十センチのすらりとしたモデル体型で、目鼻立ちもはっきりしているハーフ顔。
髪型はいつも夜会巻きにしていて、洗礼された高貴な雰囲気をまとっている。
性格もサバサバしていて、仕事が誰よりもできる隙のない女性だ。

真由子が聞いた噂によると五十嵐さんの車に乗りこむところを数日前に目撃されたらしい。
しかも車内で熱い抱擁を交わしていたというから、駆派が瀕死の状態になっているのだとか。

「まぁ菅原チーフなら全然あり得るよね。綺麗だし仕事できるし五十嵐さんとお似合いじゃん!」
「そんなこと言ってるの、あんただけよ。今日のフライトはお葬式状態のクルーもいるから気を遣いなさいよ」
「はいはい」

今日のフライトは彼女も乗務予定だった。
それにしてもつくづく信じられないな。
五十嵐さんは愛想はよくないわ、仕事の鬼だわで、どこがいいのかさっぱり分からないけれど、なぜか伊織さんよりも人気がある。
本当に噂が事実でマドンナ的存在の菅原チーフの心も射止めていたとしたら、逆に私の感覚がおかしいということになるだろう。

(本人にも駆派にも気を遣わなくちゃいけないってことか……)