出社した後、更衣室に移動した私はロッカーの鏡を見ながらスマイルを作る。
首に巻いたピンクのスカーフをリボン結びにして横に移動させていると、後ろからにゅっと丸顔の美女が覗いてきた。
「真由子、どうしたの?」
「今日のキャプテンは駆さんでコーパイは伊織さんだって」
「えっ、伊織さん!?」
彼女は同期の宮沢真由子。私とは真逆のしっかり者タイプで、面倒見がすごくいい。
今日は久しぶりにフライトが被ったこともあり、互いにテンション高めだ。
しかも推しと乗務できるという最高の幸運に、曇っていた心がサーッと晴れ渡る。
「兄弟共演初よねぇ、ご一緒できて光栄だなぁ~!」
「はぁ……また五十嵐さんとか。伊織さんだけでよかったのに」
「安奈は贅沢! 目が合うだけ興味があるってことじゃないの」
真由子がとんでもないことを言い出したので、じっとりと嫌味を込めて見つめる。
(そんな興味一ミリも欲しくなさすぎて、ため息が零れるよ)
私のアイドル、五十嵐伊織さんは三十二歳のイケメン副操縦士。
王子様みたいに甘いマスクで、身長も百八十二センチと高く、細マッチョ。性格はレディファーストで穏やかだ。
そんな彼が五十嵐さんが血のつながった兄弟だなんて、本当に信じられない。
用意を済ませ更衣室を出る。
フライトの事前打ち合わせ――グリーフィングを行う部屋へと移動していると、真由子は突然思い出したように、「あっ」と声を上げた。
「そういえば安奈、あの噂聞いた?」
「噂……?」
「駆さんと菅原チーフが出来てるって」
首に巻いたピンクのスカーフをリボン結びにして横に移動させていると、後ろからにゅっと丸顔の美女が覗いてきた。
「真由子、どうしたの?」
「今日のキャプテンは駆さんでコーパイは伊織さんだって」
「えっ、伊織さん!?」
彼女は同期の宮沢真由子。私とは真逆のしっかり者タイプで、面倒見がすごくいい。
今日は久しぶりにフライトが被ったこともあり、互いにテンション高めだ。
しかも推しと乗務できるという最高の幸運に、曇っていた心がサーッと晴れ渡る。
「兄弟共演初よねぇ、ご一緒できて光栄だなぁ~!」
「はぁ……また五十嵐さんとか。伊織さんだけでよかったのに」
「安奈は贅沢! 目が合うだけ興味があるってことじゃないの」
真由子がとんでもないことを言い出したので、じっとりと嫌味を込めて見つめる。
(そんな興味一ミリも欲しくなさすぎて、ため息が零れるよ)
私のアイドル、五十嵐伊織さんは三十二歳のイケメン副操縦士。
王子様みたいに甘いマスクで、身長も百八十二センチと高く、細マッチョ。性格はレディファーストで穏やかだ。
そんな彼が五十嵐さんが血のつながった兄弟だなんて、本当に信じられない。
用意を済ませ更衣室を出る。
フライトの事前打ち合わせ――グリーフィングを行う部屋へと移動していると、真由子は突然思い出したように、「あっ」と声を上げた。
「そういえば安奈、あの噂聞いた?」
「噂……?」
「駆さんと菅原チーフが出来てるって」

