理解が追いつかないまま、五十嵐さんを凝視する。
長い指に引っかけられているのは、私でも知っている国内製の高級腕時計……。
円盤を縁取るいくつものダイヤを引き立たせるように、ダイヤルはひっそりとマットなブラックが敷かれている。
「それ、非売品の」
男性は見覚えがあるのか、興奮気味に鼻息を荒くしながら時計を奪う。
「お客様がご存じのようで安心しました。私は今日を合わせ二回しか使用していません。大きな声では言えませんが、新しい時計に変えて頂いても構いません。ご検討いただけると幸いです」
五十嵐さんが微笑んで提案すると、男性は気まずそうな表情で時計をビジネスバックにしまいこむ。
「……今後このようなことがないようにして頂きたい」
男性はそう言って座席から立ち上がり、そそくさとその場を後にする。
呆気にとられていると、男性の姿が見えなくなったところで五十嵐さんは私たちの方を振り返った。
「この件に関しては俺から本部に上手く言っておく。お前たちは気にするな」
彼はため息交じりにそうつぶやき、さっさと歩き出す。
一連の出来事がものの一分間に起きたということもあり、私も菅原チーフも、もちろん他のクルーもその場に固まっていた。
しかしふと、軽快な革靴の足音が耳に届いてはっとする。
「ちょっ、ちょっと待ってください! 五十嵐さん!」
長い指に引っかけられているのは、私でも知っている国内製の高級腕時計……。
円盤を縁取るいくつものダイヤを引き立たせるように、ダイヤルはひっそりとマットなブラックが敷かれている。
「それ、非売品の」
男性は見覚えがあるのか、興奮気味に鼻息を荒くしながら時計を奪う。
「お客様がご存じのようで安心しました。私は今日を合わせ二回しか使用していません。大きな声では言えませんが、新しい時計に変えて頂いても構いません。ご検討いただけると幸いです」
五十嵐さんが微笑んで提案すると、男性は気まずそうな表情で時計をビジネスバックにしまいこむ。
「……今後このようなことがないようにして頂きたい」
男性はそう言って座席から立ち上がり、そそくさとその場を後にする。
呆気にとられていると、男性の姿が見えなくなったところで五十嵐さんは私たちの方を振り返った。
「この件に関しては俺から本部に上手く言っておく。お前たちは気にするな」
彼はため息交じりにそうつぶやき、さっさと歩き出す。
一連の出来事がものの一分間に起きたということもあり、私も菅原チーフも、もちろん他のクルーもその場に固まっていた。
しかしふと、軽快な革靴の足音が耳に届いてはっとする。
「ちょっ、ちょっと待ってください! 五十嵐さん!」

