冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする

馴染みのある低音に緊張が走り、私はすぐに横を振り返った。

「この度はうちの乗務員がお客様の大切な持ち物を破損してしまい、大変申し訳ございませんでした。私の指導不足です」

五十嵐さんの声が普段よりワントーン低いのを感じて、胸の奥がすっと冷えていく。
嫌いな相手のために、長時間フライトの疲れ切った体をひきずって頭を下げてくれているのだ。
彼にはなんの落ち度もないのに。
内心私に呆れ果てているのだろう。これからもっと風当たりが強くなるに違いない。

(仕方ない。一緒のフライトになったのが運のツキだ)

「そこでひとつ、私からお客様に提案があるのですが」

予想外の言葉に顔を上げると、五十嵐さんは落ち着いた所作で左腕に着けていた時計を外し、男性の前に差し出した。

「私の私物になってしまいますが、これでお許しいただけないでしょうか」