冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする

男性の激しい剣幕に、機内の視線が一斉にこちらへと集中する。
男性の怒りは収まらず罵声を浴びせられていると、先輩クルーがすぐさま私のところまで飛んできてくれた。

「お客様、どうされましたか。乗務員に不手際がございましたか」

「不手際も何も、俺の時計にコーヒーをぶっかけやがった! 価値がなくなったじゃないか!!」

もうすぐ着陸態勢に入ってしまうこともあり、早く男性の怒りを鎮めなくてはならない。
腰を折って、必死で深々と頭を下げ続ける。

「申し訳ございません、今すぐお手拭きをお持ちいたしますので」

「俺はこの腕時計をどうしてくれるんだって聞いてるんだよ!」

何度謝罪しても男性の怒りは収まらない。
菅原チーフも対応にあたってくれ、これ以上機内の混乱を広げないようにと、怒りの矛先である私はその場から一旦姿を消すことを命じられる。
複雑な気持ちのまま持ち場を離れた後、真由子づてに男性が菅原チーフの説得のおかげで落ち着いてくれたことを聞き、少しだけ安堵した。

(大変なことになっちゃった……。このまま損害賠償沙汰になるかもしれない)