好きよりも、キスをして



「緋色の居場所は、この学校じゃないなって。ここに緋色を縛っておくのは違うなって、分かったの」

「澤田……」



昨日、緋色と学校を後にする時に「鞄はいらない」と彼は言った。

きっと、その時に緋色は覚悟を決めていたんだと思う。この学校を辞める覚悟を。その事を、私に打ち明ける覚悟を。


全てを話した緋色の顔は、今でも忘れない。


常に張り付いていたニコニコした仮面は、もう、緋色の顔に存在しなかった――




全てを話し終えると、隣の沼田くんは「あーあ」と、気怠そうに伸びをした。



「嫌になっちゃうよねぇ。澤田の事が好きな俺が、澤田のすぐ隣にいるのに。俺が澤田の事を横取りするって思わないのかっての。

だって、そうでしょ。こんなの……まるでアイツが、俺の事を信用してるみたいじゃん」

「沼田くん……」

「ふん」