好きよりも、キスをして



「澤田は、知っていたの?静之が退学する事」



それに私は「うん」と頷いて返す。



「昨日の放課後、言われたの。緋色、本人から――」



そう。昨日の放課後。広い公園の、大きな木のそばで。

緋色が約五分かけて打ち込んだ内容。それは、自身の退学の事だった。






『(俺、今の学校を退学しようと思う。枝垂坂の事があってとかじゃない。入学して日は浅いけど、それでも息苦しかったんだ。

いつも仮面をつけていないといけない事。ニコニコしないといけないって、自分に無理させている事も。頑張って皆に嫌われないようにしなきゃって、そればかり考えてた。

だけど、朱音が言ってくれた。逃げてもいいんだって。

それで俺、考えた。今の高校に、自分を押し殺してまでいる必要はないなって思った。

朱音と一緒の高校に通えるのは嬉しいし、楽しい。付き合い始めたから、学校生活はこれからだって言うのも、分かってる。


でも……)』