好きよりも、キスをして



「はぁはぁ」と上がった息は、なかなか収まらないらしい。少しだけ呼吸を整えた後、先生は「落ち着いて聞けよ、みんな」と言い放った。



「静之緋色は、昨日限りで退学したそうだ。今日から来ないからな。皆、分かったな?」



ザワッ


いくら落ち着いていた皆も、この時ばかりは取り乱したようだった。特に沼田くん。

沼田くんは私の隣で「え、え?どういうこと?」と疑問符を浮かべて、私に聞いてきた。



「二人、付き合ったんだよね?」

「う、うん」



その説は本当にお世話になりました――と沼田くんに重ねてお礼を言った私に「俺は別の奴からお礼が聞きたいよ」と沼田くんは、ジト目で緋色の机を見た。


机上には投げ出された筆箱。置きっぱなしのノート。机の横にかかったカバン――


どれもこれも静之くんの物で、私物がこんなにあるのに当の本人が退学というのは、すごい違和感があった。


沼田くんは「え、わけがわからない」と頭を抱えた。だけど、冷静な私を見て、何かを察したようだった。