好きよりも、キスをして



その翌日。


担任の先生が、一限目が始まる前に、教室にやってきた。「はぁはぁ」と、かなり急いでいる。



「みんな、落ち着いて聞いてくれよ」



クラスメイトは、皆が落ち着いていた。枝垂坂さんも、沼田くんも、そして私も。


枝垂坂さんは、緋色が自分の傍から離れていったけど、その事については、さして気にしていない様子だった。

女子の噂を聞くに、新しい彼氏が出来たらしい。元カレの事も、ケンカの強い今の彼氏が、丸く収めてくれたようだった。


沼田くんとは、昨日は見苦しい物を見せてしまったから、私は気まずかった。けど、沼田くんは何事もなかったように「おはよ、澤田」と挨拶をしてくれた。

大人な対応をしてくれる沼田くんに脱帽する。私たちは昨日と同じように、他愛もない事を話していた。


だから皆、落ち着いていた。先生一人を除いては。