好きよりも、キスをして


すると、バチッと、漆黒の瞳と目がかち合う。

さっきまで大笑いしていた緋色は、もうどこかへ行ってしまったらしい。「朱音」と口パクで名前を呼ばれて、さっきとは違う真剣な顔で私を見た。



「(話がある)」

「うん、なに?」



首をかしげると、緋色はスマホに文字を打つ。真剣な顔で。時折、立ち止まって、何かを考えながら。


そして五分程の時間を要して、緋色は「(よし)」と一度頷いた。


そして熱心に打ち込んでいた時とは打って変わって「(ほい)」とあっけらかんとした雰囲気で、スマホごと、私に渡してきた。

画面を少し見ただけで、長い文章が並んでいるのが分かった。



「読んでも、いいの?」



ただ一度。コクンと頷いた緋色。

私は黙って、画面に目を移すのだった。