好きよりも、キスをして


「緋色は、いつも私の事を考えてくれる、見てくれる。気にしてくれる。その事が私をいつも救ってくれてるんだよ。

ありがとう緋色。緋色(ひいろ)は、私のヒーローだね」

「(……)」

「な、なんちゃって……」



やばい、完璧に間違えた。自分でも「しまった」と恥ずかしくなるくらいには、だいぶやらかしている。



「あの、緋色!これはね、」必死で言い訳を考えようとしていると、手をパンパンと叩いて、お腹を抱えて笑う彼が、私の視界に入ってきた。

緋色はどうやら爆笑しているようで。

穴があったら入りたいくらいに恥ずかしいけど、でも、いいや。緋色が笑ってくれるなら、もう、なんでもいいや。



「どーせ寒いギャグですよーだ」

「(ほんとな。どーやったら思いつくんだよ、腹いてー)」



ろくに画面も見ずに、よく正確に文字が打てるもんだ――そう呆れながら。でも、大口を開けて、歯を見せて笑ってくれる彼を「大好き」と思いながら。何秒でも何分でも、彼を見つめ続けた。