肩を落としてシュンとする緋色。大型犬が耳を垂らしているみたいで。こんな状況だけど「可愛い」なんて思ってしまった。
「おいで、緋色」
「(……)」
呼ばれ方に不満がありそうな目つきをした緋色。だけど、大人しく私の胸の中にポスンと入ってくる。
近くにベンチがあったから、緋色はそこに座っていて。座った緋色の頭がちょうど私の胸の高さだから、今の体勢がすごく自然に出来る。
大人しく抱きしめられている緋色を見ると……それがまた可愛くて。
母性本能をくすぐられた。まだ未知な「母性」だけど。でも、きっと母性って、こういう事を言うんだと思う。
何かを守りたくなる気持ち。
誰かを愛しく思う気持ち。
込めれるだけの思いを込めて、私は口を開いた。
「緋色、ありがとう」
髪を撫でながら、私は緋色に子守唄を歌うように囁く。
上から見た緋色は、最初は薄目を開けていたけど、少しずつ瞼が下がり。途中から、目を伏せて私の話を聞いていた。



