好きよりも、キスをして



口を動かす。だけど、声の出ない俺がいくら口を動かしたところで、気づく奴なんていない。俺が通り過ぎて初めて、俺という存在が目に入る。


だけど、それじゃ間に合わない。


あと少しで、二人は校門を出てしまう。校門を出ると、バスに乗るかもしれない。駅を目指すかもしれない。どこかの店に入るかもしれない――


何としても、今、朱音に振り向いてほしい。

そう強く願った。



「(朱音!!)」



だけど、俺のしてきた報いは、そう簡単には消えない。

朱音は気づかない。沼田さえも気づかない。

くそ、俺の足音さえも無音なのかよ?こんなに地面を蹴ってるのに、誰も気づかないのかよ。


朱音、朱音。行くな。俺にはやっぱりお前が必要だって、やっと気づいた。ようやく素直になれた。


今、この瞬間に――朱音の目に、俺が映ってほしい。


だから俺を見ろ、朱音。