好きよりも、キスをして



不格好なくらいに髪が乱れて、決してカッコよくない姿勢で、一心不乱に走っている。

だけど、いいんだ。俺の心が、朱音を求めているから。叫んでいるから。


朱音、朱音――!


俺は、やっぱり朱音にそばにいてほしい。前、朱音は俺にこう言ってくれた。



――緋色からは、私に無かった強さを、教えてもらった



もし、その言葉が本当なら。俺の強くない部分を朱音が支えて、朱音の強くない部分を俺が支える。そんな関係を、これからも築いていきたい。続けていきたい。

沼田、お前には渡せない。

朱音の隣は俺がいいって、やっと分かったんだ。



「(朱音、待ってろ!)」



だけど必死に走る俺を、トイレから帰ってきたらしい枝垂坂が「あ、静之くん」と言って声を掛けた。腕を掴まれて、グンとブレーキがかかる。