好きよりも、キスをして



驚いて悔しがった俺の顔を確認した後に、沼田は完全に姿を消した。慌てて後を追いかけたが、曲がり角を曲がったところで立ち止まる。


沼田と朱音が、二人そろって教室から出て来たからだ。


どうやら思ったよりも早く、朱音の用事が終わったらしい。朱音は、もう教室に戻っていて沼田を待っていたらしかった。


廊下を歩く二人。

その時の会話が、俺の耳にも届いてやってくる。



「何の用事だったのさ」

「最近、授業中に上の空な事が多いから気をつけろって。それだけ」

「余計なお世話だっての。そう言ってやれば?」

「ふふ。ありがと」



「……っ」



二人並んで帰っている姿を見るのは初めてじゃないのに、嫌なくらい心臓がバクバクと音を立てている。

それはまるで、警告音。

俺に「このままでいいのか」と選択を迫っているようだった。