自分でも、驚くくらい——手を離している時よりも、つないでる時の方が安心できるくらい。
「ありがとう」
口癖かってくらい、愛はいつも俺にお礼を言ってくる。
謝る回数も多いけど、その倍はありがとうと言われている気がした。
俺もたまには口にしたいけど、小っ恥ずかしいを言い訳にしてできずにいた。
そんな俺はきっと、愛の優しさに甘えてる。
1年後……いや、1年後とは限らないか……愛が新しいパートナーを見つけたら、俺たちのペアは解消になるんだ。
そうなったら……こいつは違うやつと手をつないだり、恋愛をすることになるのか。
他のやつの、婚約者に……。
「……嫌だ」
「え?」
無意識に、口に出してしまっていた。それくらい嫌だとはっきり思ったから。
「や、やっぱり嫌だった……?」
「あー……違う、違うから、離すな」
俺が手をつなぐのを嫌がっていると勘違いしたのか、離れそうになった愛の手を強くにぎる。
「降りるまで、絶対離すなよ」
他のやつのパートナーになんか……させたくない。
もやがかかったような曖昧だった感情が……少しずつ浮き彫りになっていく。


