妹は可愛かった!妹はマトモだった?



桜木はとりあえず安心した

”妹はマトモのようだ…”

初対面でそう思えたからだ

意外なほど…


***


”なんか、気さくだな、この子…”

何しろこの子は引きこもりだと聞いていたのだ

桜木は、いきなりファミレスに連れ出すことには抵抗があった

だが、”それ”は彼女からのリクエストだったのだ


***


「あのさ…、僕と会うこと、お姉さんには…」

「大丈夫です。言ってません」

あからさまに安堵する桜木を見て、ツグミはクスッと笑った

”かわいい…”


***


かわいい14歳の女の子との異色の対談は和やかに続いた

「お姉ちゃんは昼間いないんで、裁判の訴状は全部私が受け取ってるんです。私はずっと家にいるんで。ひっこもりっ子なんです、私…」

イタリアンハンバーグをおいしそうにほう張りながら、ツグミは人懐っこい顔で”告白”した

”俺の告白はまだあとにしよう”

桜木は予想外に普通の子だったツグミを前にして、話の組み立てを練っていた


***


”参った…、この子の口からこんな言葉が飛び出すなんて…”

「お姉ちゃんはイカレてるんです。私は二人で暮らしているので、いつもお姉ちゃんを怒らせないようにしてます。いい子の猫かぶりをしてて…、もう疲れちゃった…」

”かわいそうに…”

「裁判、慎重に進めた方がいいですよ。家も結構近いんなら、用心していないと。ああそうだ、セ○ムとかのセキュリティー、つけてますか、木村さんの家…」

桜木は念のためということで、木村という偽名を使っていた

ちなみに一戸建ての桜木家にセキュリティーは施していなかった


***


かわいい妹②



ツグミは引きこもりとは思えないほどよくしゃべった

”本当に引きこもりなのか、この子…”

ツグミは桜木より早く、すでにイタリアンハンバーグ定食を平らげていた

「あー、とってもおいしかった。素敵なおじさんと一緒にランチだったし。ファミレスなんて久しぶりなんですよ、へへ…」

”やっぱり、かわいいよ、この子。弟め、それをあんな目に…”


***



「…そうですか。おじさん、やっぱりお姉ちゃんのこと、異常だと思って、裁判の前にいろいろ調べてるんですね、あの女のこと…」

桜木は慄然とした

”この子、姉のことを怖れているだけじゃなく、憎んでいるのか?”


***


”キーン、キーン…”

「あの女、今に人だって殺しますよ。きっと、いや、必ず…」

ハンバーグのソースがついたナイフを皿の上で転がしながら、ツグミはニヤッと笑ってそう言い放った

もう桜木は背筋が寒くなり、言葉が出なかった