再びわたしを抱きしめた腕は、さっきと違って嘘みたいに優しかった。


キーン、コーン……。

ホームルーム開始のチャイムを聞きながら、求められるままに抱きしめ返す。



「うざい……耳障り」

「え?」

「チャイム。邪魔、消えればいい。時間とか」

「………」

「ずっと……一緒にいたいのに……」



かすれた声が鼓膜を揺さぶって。


こうされるたびに、この人は今までどれだけ寂しい思いをしてきたんだろう……って胸が苦しくなる。



──わたしとふたりきりのとき。

且つ、怒っていないとき。



雪くんは、気の済むまでわたしに密着して、片時も離れたがらない。


ほっぺた、首筋、肩。
腕、手のひら、指先……。

必ずどこかが触れ合ってて。


しばらくじっと抱きしめたあと、



「ん……っ」

「背中を縦になぞられんの弱すぎ」


「やぅ、それやめてって……いつも言ってるのに……」

「びくってするの、ほんと可愛い、」



──こうやってときどき、雪くんのお遊びが始まってしまう。