わたしに気を取られて、相手を押さえつける力が緩んでしまったらしい。


ばっ!と本領くんの手中から逃れたその人が、慌てたようにこちらへ走ってくる……。


ひえ……!

避けるスペースないしぶつかる……!!


目を閉じて、1秒、2秒、3秒。


なんの衝撃もなく、おそるおそる目を開ければ。


うつ伏せに倒れた人と。

その人の上に座りながら、その人の頭をぐりぐりと地面に押し付ける本領くん……。



目線は、しっかりわたしに向いている。



「あー……えっと……」


言い訳、考えてるみたい。

学校で見る本領くんとは違う。

見られたくなかったって顔をしてるから、わたしが見ちゃいけないものだと思った。


ここにいても、たぶん本領くんの邪魔にしかならない……。



「お、お邪魔しました……」


ひとまず去るのが吉だと考えて、後ずさる。