や、やばい……!?

なんか治安の悪い路地に来ちゃったかも……!


引き返したほうがいいかな。

で、でも、あんまりひどい喧嘩なら、ケーサツとか呼んだほうがいいよね……っ。


スマホを握りしめて、恐る恐る声のする方に近づいていく。


薄暗くてよく見えないけど……人が、ふたり……。


輪郭を捉えた同時、

───ガァン!

再び激しい音がした。



ひとりが、もうひとりを一方的に蹴り飛ばしてるように見える。



「ほら、加減してやってる今のうちに吐いたほうが身のためだよ」



うめき声を上げる相手と対象的な……静かで冷やな声に。

はた、と足を止めた。



「あ、そ……。仲間思いでほんとうにえらいね。じゃあ次、右腕折るけど……いい?」


ざわっと胸が騒いだ。

一瞬、聞き間違いかなと思ったけど。


トーン、口調、テンポ、……どれも、わたしの好きな人と、よく似てる気がして。