でも初めて喋った日から、心臓がおかしかった気がする。


転んだところを助けてもらったわけだけど、今思えば、本領くんはバイクに乗ってたのを、わざわざ降りてきてくれたんだよね……。


わたしが加藤 杏実だって最初からわかってたなら、助けてくれなかったのかな……。


ううん、きっと助けてくれた。

本領くんは人のことよく見てて、優しいもん……。



一体誰が、本領 墨くんが極悪人だなんて言い出したんだろう。


そんなことを考えながら、大通りを少し過ぎて、近道になる細い路地へと曲がったときだった。



──────ガァン!

と何かが激しくぶつかる音がして、ヒイっと縮こまる。



「ゆ、許してくれ……!」


なんて恐怖に怯えた声まで聞こえてきて、血の気がさあっと引いていった。