.

.


中城くんが教えてくれた場所。

西の非常階段まで走った。


弾んだ息のまま駆け上がろうとしたところで──────誰かの話し声が聞こえてきた。


あれ?

雪くんと……もうひとりいる……?


そろりそろりと近づけば、だんだん声がはっきりとしてくる。


相手は……女の子。


まさか密会?

わたしに愛想を尽かして、もう好きな子を乗り換えたのかな。

だったらわたしがここにいたら非常にまずい。

修羅場だ……。



どうする?
教室に戻る?
でも下手に足音立てたらバレちゃう……。



「……そうだったんだね。本当のこと話してくれてありがとう雪くん」



そろりと一方後ずさったのと、よく知った声が耳に届いたのはほぼ同時だった。



「えっ、まりやちゃん?」


思わず飛び出た声。

はっと口を塞ぐけどもう遅い。



「杏実っ?」


まりやちゃんのびっくり声が階段に響きわたった。