「なに、うちの使用人に手出してんの」


低い声が背後から聞こえても、振り向く力もなかった。

ここに中城くんがいるってことは、雪くんにも最初から伝わってたってこと。



「中城、お前は下がれ」

「はい」


中城くんが頭をさげる。

ぴしゃりと扉を閉められた瞬間、わたしと雪くん、ふたりだけの空間になる──────。




「おれに隠れてまりやに会えると思ったか」

「………」

「おれを騙して、こそこそと仲良くするつもりだったのか」

「………」

「答えろよ!」



ガン! とそばにあった机が蹴り飛ばれた。



「約束破ったらどうなるか忠告したよな。明日から神原まりやが学校に来れなくなっても文句は言うなよ」

「っ、まりやちゃんにはなにもしないで……お願い……」