──────
───
家庭の事情で、幼少の頃からすでに天沢 雪の存在を知っていた。
天沢の長男と本領の次男。
同級生ということもあって、界隈の大人たちの興味は必然的に俺たちに注がれた。
好奇の目に晒されて、勝手に比べられて。
天沢 雪 という男を嫌でも意識するしかなかった。
地区の違いで小学校は別で、中学から同じになった。
当然、クラス替えで一緒になった試しはない。
街の大抵の人間は、本領派であったとしても『本領』という括りからは一定の距離を置こうとする。
簡単に言えば、“危ない“から。
俺の家の権力にあやかりたいやつらは山ほどいて、それでも実際に内側に踏み込めば、恐ろしさのあまり逃げ出してしまう。
本領派は直接的に支持しているというより、遠くから眺める崇拝に近い気がする。



