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それは、本領くんの姿を見送ったあと。
2年生の教室まで急ごうと身を翻しかけた時だった。



「加藤様」

「ひッ⁉︎」


真後ろから声がして振り向けば、至近距離に人が立っていて。

勢いよくぶつかりかけたのをスレスレで避けて、はあ……と息を吐く。



「いつも気配なさすぎだよ、びっくりする、心臓に悪い……!」



なんて文句を言ってみても、相手は表情ひとつ変えず、じっとわたしを見つめるばかり。

仕方ない、これはいつものこと。



わたしが心の中で勝手に“能面くん"と呼んでいるこの人は、雪くんの側近……

中城 真尋(なかじょう まひろ)くん。
同級生。


側近だなんてどこぞの貴族?って感じだけど、同じ学校にこうして実在するんだからすごいなあと思う。


そして……



「先ほど、男のバイクから降りて来られたように見えましたが」



どきどきこうやって、抑揚のない声で爆弾を落としてくるから──とても困る。