「どうした? 顔色悪いね」

「う……、いや、本当にわたし考えナシだったかもって。今さらなんだけどね、もし雪くんにバレたら――」



――怒られるくらいじゃ済まないし。
……なんて。


うっかりこぼしそうになって、はっと思いとどまる。

これは誰にも言っちゃだめなこと。

ましてや敵組織の総長に、なんて、とんでもない。



派閥とか敵とか。そういう区切りをつくるのは馬鹿げてると思うけど、わたしのその価値観だけで解決できるような、ぬるい問題じゃないんだもん。


それに……大悪党・本領家の次男”。

噂が本当だとしたら本領くんは、雪くん以上の危険人物ってことになる。

これからは警戒に警戒を重ねなくちゃ……!

……と、意志を固めた矢先に。



「そう? もし、また倒れそうになったら言いなよ。俺が助けてあげる」

「え……」


びっくりするくらい優しい響きだった。

警戒心なんてするりと解けてしまいそうになるくらい。