今、こうして、インスタに書き込んでいるけど、きっと誰にも読まれることなんてない。だから、私のアカウントはノートでしかないから、思ったこと、今の考えをそのまま書くだけにする。
私は18歳になったばかりの2月の初めにすべての意識をおいてきた気がする。
例えば、人は人生の中でどれだけ喪失を経験するんだろう。
例えば、人は人生の中でどのくらい微笑まれるのだろう。
数えることができない、すべての出来事に嫌気がさしたら、私はどうやって生きていけばいいのだろうか。私はわからないし、気持ちを整理するために誰にもフォローされていない鍵垢に書きなぐる気でいる。
☆
「人なんて、みんな強く生きれないよ」
イサムは慣れた手つきで缶のコーラを開けた。炭酸が抜ける涼しい音がしたけど、すでに11月の半ばで、夏の暑さの記憶なんて忘れてしまっていた。学校の屋上から、一望する街は今日も夕日でキラキラと輝いている。
「だけど――」
「だけどなんてないよ。メル」
イサムが微笑むと風が吹いた。その風でイサムの髪が弱く揺れた。イサムの髪は肩まで着くくらいロングだ。そして、パーマがかかっているから、アンニュイな印象を受ける。
「そんな萌え袖するなよ。セーター伸びるよ」
私はそう言われて、急に顔が赤くなるのを感じた。手すりから手を離して、両手をスカートのポケットに突っ込んだ。
「イサムさんはさ、どうして、強く生きることができるの?」
「簡単だよ」
イサムはそう言いながら、手すりから手を離し、身体をクルッと回して、背中で手すりに寄りかかった。そして、勢いよく、上を向いた。
一瞬、このまま、飛び降りるのかと思った。だけど、イサムはその場に居たままだった。
首から上はすでに手すりから大きく出ている。長い髪がだらっと、下がり、イサムの顎のラインが綺麗に見え、少しだけドキッとした。
「全部、知らないふりして笑顔でいればいいんだよ」
そう言い終わったあと、イサムはまた元の姿勢に戻り、右手で髪をかきわけた。
なに、言ってるんだろう。コイツ――。
たぶん、他の学校だったら、明らかに校則違反になるはずだけど、うちの学校の校則はあるようでないものに近い。だから、派手に髪を染める以外で髪型は言われない。
「ねえ」
「なに? メルちゃん」
「なんで、人って、寿命があるんだろう」
「いいんだよ。そんなことより、どう? 話、乗ってくれる?」
イサムの微笑みはオレンジ色で染まっていた。
☆
イサムの余命ノートを見てしまったのは偶然だった。
教室に忘れ物を取りに行ったとき、教室には誰も居なかった。だけど、電気はついていた。私の席の前はイサムの席で、イサムの机にはノートが広げられていた。
別に見るつもりはなかった。だけど、自分の席に向かっているときにノートの内容が目に入ってしまった。
・余命までやりたいこと
余命って。予想外の言葉が目に入ってきて、私は立ち止まり、そのノートをじっくりと見てしまった。
・卒業して、半年くらいは生きたい。
・メルと付き合う。
・あとはもういい。それで十分。
「――なにこれ」
私は理解できずに思ったことを口にした。一度、目を瞑って、すーっと息を吐いた。そして、見開き、もう一度ノートを見た。
「なんで、私――」
「マジかよ」
後ろを振り返ると、右手を額に当てて、上を向いたイサムが立っていた。
私は18歳になったばかりの2月の初めにすべての意識をおいてきた気がする。
例えば、人は人生の中でどれだけ喪失を経験するんだろう。
例えば、人は人生の中でどのくらい微笑まれるのだろう。
数えることができない、すべての出来事に嫌気がさしたら、私はどうやって生きていけばいいのだろうか。私はわからないし、気持ちを整理するために誰にもフォローされていない鍵垢に書きなぐる気でいる。
☆
「人なんて、みんな強く生きれないよ」
イサムは慣れた手つきで缶のコーラを開けた。炭酸が抜ける涼しい音がしたけど、すでに11月の半ばで、夏の暑さの記憶なんて忘れてしまっていた。学校の屋上から、一望する街は今日も夕日でキラキラと輝いている。
「だけど――」
「だけどなんてないよ。メル」
イサムが微笑むと風が吹いた。その風でイサムの髪が弱く揺れた。イサムの髪は肩まで着くくらいロングだ。そして、パーマがかかっているから、アンニュイな印象を受ける。
「そんな萌え袖するなよ。セーター伸びるよ」
私はそう言われて、急に顔が赤くなるのを感じた。手すりから手を離して、両手をスカートのポケットに突っ込んだ。
「イサムさんはさ、どうして、強く生きることができるの?」
「簡単だよ」
イサムはそう言いながら、手すりから手を離し、身体をクルッと回して、背中で手すりに寄りかかった。そして、勢いよく、上を向いた。
一瞬、このまま、飛び降りるのかと思った。だけど、イサムはその場に居たままだった。
首から上はすでに手すりから大きく出ている。長い髪がだらっと、下がり、イサムの顎のラインが綺麗に見え、少しだけドキッとした。
「全部、知らないふりして笑顔でいればいいんだよ」
そう言い終わったあと、イサムはまた元の姿勢に戻り、右手で髪をかきわけた。
なに、言ってるんだろう。コイツ――。
たぶん、他の学校だったら、明らかに校則違反になるはずだけど、うちの学校の校則はあるようでないものに近い。だから、派手に髪を染める以外で髪型は言われない。
「ねえ」
「なに? メルちゃん」
「なんで、人って、寿命があるんだろう」
「いいんだよ。そんなことより、どう? 話、乗ってくれる?」
イサムの微笑みはオレンジ色で染まっていた。
☆
イサムの余命ノートを見てしまったのは偶然だった。
教室に忘れ物を取りに行ったとき、教室には誰も居なかった。だけど、電気はついていた。私の席の前はイサムの席で、イサムの机にはノートが広げられていた。
別に見るつもりはなかった。だけど、自分の席に向かっているときにノートの内容が目に入ってしまった。
・余命までやりたいこと
余命って。予想外の言葉が目に入ってきて、私は立ち止まり、そのノートをじっくりと見てしまった。
・卒業して、半年くらいは生きたい。
・メルと付き合う。
・あとはもういい。それで十分。
「――なにこれ」
私は理解できずに思ったことを口にした。一度、目を瞑って、すーっと息を吐いた。そして、見開き、もう一度ノートを見た。
「なんで、私――」
「マジかよ」
後ろを振り返ると、右手を額に当てて、上を向いたイサムが立っていた。