この嘘に、ピリオドを

(あ、桜……)

美しい日本庭園には、桜の花が満開に咲いていた。春風が吹くたびに薄いピンクの花びらが宙を舞い、地面に落ちて行く。

島には桜の木はなかった。そのため、桜を春は見るのは久しぶりだ。最後に見たのはドイツの動物園でジョンと共にお手伝いに行った時である。

『心春、ナマケモノは桜の花も食べるんだ』

そう言い、ジョンはピンクの花のついた桜の木の枝をナマケモノに与えていた。桜を食べるのか、と心春はとても驚いたことを覚えている。

(ジョンさん……)

もう彼に会うことはできない。声を聞くことも、笑顔を見ることもできない。涙が零れ落ちそうになるのを必死で堪える。悲しいのに、胸は温かく脈打っていた。

「桜、見に行きませんか?」

総司に声をかけられ、心春は「いいえ、結構です」と首を横に振る。それからは二人の間に会話はなくなり、そのままお見合いは終わっていった。だが、心春は一つ知ったことがある。

(私、ジョンさんに恋をしているのね……)

感情の名前をやっと知った。だが、それはもう叶うことのない気持ちなのだ。