この嘘に、ピリオドを

「失礼します。お料理をお持ちしました」

心春の前に、芸術作品のように美しい料理が運ばれてくる。懐石料理と呼ばれるものだろう。宝石のように煌めいている。

「おいしそうですね!」

どこか上ずった声で総司が言う。話しかけられている、とは心春は思いもせずただ料理を見ているだけだった。

「ここの料理は本当においしいんですよ。きっと気に入ります」

父がそう言いながら箸を持つ。母も箸を持ち、総司の両親も「それは楽しみです」と言いながら箸を持つ。俯いたままの心春の耳に、箸が食器に触れる音が聞こえた。だが、心春は目の前に並べられた料理を食べる気にはならなかった。

(ジョンさんたちと食べるご飯がいい)

島では毎日の食事は当番制だった。幼い頃から母に料理を教えられた心春の料理はみんなに好評だったが、心春が一番好きなのはジョンが作ってくれたビーフシチューだった。ジョンの煮込み料理の腕前は右に出るものはいない。

(もうあのビーフシチュー、食べられないのね)

そう思うとまた悲しくなってしまう。そんな中、総司の「すごくおいしいです」という声が耳に入った。