そっと、抱きしめたい。


こういう時、電話越しがもどかしいと感じてしまう。

優しい渚の顔が見たい。

オレのことを考えてくれている渚を、ぎゅっと抱きしめて、独り占めしたい。



『ね、秀ちゃん』

「ん?」

『お月様出てるよ、見える?』



オレは夜空を見上げて、
「あ、本当だ。キレイ……」
と、まん丸に光る月を見つめた。



『キレイだよねー』




早く帰りたい。

渚のそばにいきたい。











もうすぐしたら渚の待つマンションが見えてくるはず。

そう思ったら嬉しくて、ちょっとだけ歩く速度が速くなった。






マンションに着いて、オレ達は一旦電話を切った。

一階でエレベーターを呼んで待つ間。

ほんの短い、なんて事のない時間なのに、オレにはものすごく長く感じた。



エレベーターに乗り込んで、渚の部屋の階のボタンを押す。

エレベーターと一緒に、オレの気持ちも上昇していく気がした。