そっと、抱きしめたい。




定時。

いつもならもう少し残って、仕事を片付けるところだけど、今日のオレは違う。



渚と、渚の手料理が待っている。



デスクから離れようとしたその時、部長に肩を叩かれた。

ポンポンっと体に伝わる軽い衝撃に、オレは嫌な予感がする。



「ごめんなさいね、急なんだけど、一緒に出てほしい会議があるのよ」

「え?」

「もう始まるのよ、第二会議室。それであなたにはこれから……」



部長が話す内容が、右耳から左耳に通り過ぎていく。



(え?オレ、今日は帰りたいんだけどなぁ)



渚に連絡しなくちゃ。

約束の時間には帰ることは出来ないって。



「すみません、ちょっと連絡してきてもいいですか?」

「あら、急ぎ?」



良いとは言わない部長が、つかつかと会議室へ向かう。

オレは連絡を諦めて、部長の後に続いた。








「……やっと終わったぁー」



退社して、ぐっと背伸びをした。