そっと、抱きしめたい。






会社に着くと、見慣れた後ろ姿を見つけた。

喫煙ルームに向かっているその背中に、
海斗(かいと)!」
と、呼びかける。



大学時代からの友人の海斗は振り返り、「よぅっ」と笑顔になる。

その笑顔がどことなく渚に似ている気がした。

姉弟だからかな。



秀一(しゅういち)、なんかご機嫌じゃん」



海斗はあくびする。



「あれ、お前も朝弱いの?本当、姉弟ってなんとなく似てるよな」



何気なく言った言葉に、海斗は顔をしかめる。



「姉ちゃんとは似てないし。っつーか、本当にお前って、なんで姉ちゃんと付き合ってんのか分かんないし。イケメンのくせに。仕事も出来るし、性格だっていいし、モテモテなのに、なんで姉ちゃんなんだよ」

「海斗、それ、褒めてる?」

「いや、あんまり褒めてないかも」

「あはっ、何だよ、それ」



オレが笑っていると、海斗も笑顔になった。



「……しかし、姉ちゃんかぁー。マジ、謎」

「なんだよ、紹介してくれたの、海斗だろ」

「本当に付き合うとは思ってなかったんだよ。友達としてどうかなって軽い気持ちだったし」