渚の部屋の前。
インターホンを押す。
『ちょっと待ってて』
インターホン越しに渚の声。
それからパタパタと近づいてくる足音がかすかにドア越しに聞こえた。
ドアが開いた時。
渚が言った。
「おかえりなさいっ」
その言葉が、その笑顔が、胸の奥に優しく響く。
しあわせだなって、思った。
心から。
(……あぁ、そうか)
オレの帰る場所って、ここなんだ。
おかえりなさいって、言われたい。
これからもずっと。
他の誰でもない、渚に。
ノーメイクで。
ニットのセーターにデニムパンツの、いつもの部屋着。
「お仕事モード」じゃない。
素顔の渚。
そんな彼女を知っていることがくすぐったくて、でも心の中に確かな喜びが広がっていく。
何も知らない渚は、
「秀ちゃん、上がって?」
と、部屋の奥に進んで行く。



