「小鳩くんは?もう大丈夫そう?」

「あぁ、うん。もう薬飲んだから」

「そっか、お母さんまだ仕事でしょ?1人で大丈夫そう?」

「大丈夫だよ、子供じゃないんだから」

「えー、でも…急に体調悪くなったりしたら」

「大丈夫だって、気にしすぎだよ」

気にするよっ!!!

もうめっちゃ気にするしっ!!!

赤くなった人差し指に氷を当てることになるべく集中してるけど、超ッ気になってしょうがない。


琴乃先生、小鳩くん、って呼んでるわりに雰囲気すっっっごい楽しそう!


いつの間にか敬語でもなくなってるし、あんな鉄壁みたいな小鳩が超ナチュラルに会話してるし、雰囲気良過ぎない!?

それに、なんか、なんかちょっとだけ…


笑ってるようにも見えるしーーーーー!!!


「柳澤さんっ、柳澤さんはどう?」

「あ、え、私は…冷やせば大丈夫、かな」

「そう?私今から職員会議だから、もう行かなきゃいけないんだけどいいかな?もしまだ何かあれば」

「大丈夫!ちょっと赤くなってるだけだから!」

ちょっと湯煎に失敗してアッツアツのお湯に手つけちゃっただけだから、強がってるみたいになっちゃったけど実際は本当にそんな大袈裟なことはなくて。

「そう…?じゃあまた何かあったら言ってね」

ちょっとだけ変な空気にはなっちゃったかもしれない。

バタバタと琴ちゃん先生が保健室から出ていく、職員会議まで結構ギリだったのかな。

「……。」

「………。」

2人になってしまった。

なんとなく小鳩の方を見たら目が合っちゃって。

「…何ですか?」

「別にっ、…楽しそうだなっと思って!」

「……?」

なぜか不思議そうな表情をして、じぃっと私を見るから。

「え、何?」

「楽しいですけど」

「………。」

はぁーーーーーーーっ!?

楽しいんだ!?

琴ちゃん先生とキャッキャして楽しいんだ!?

それはよかったですねっ!!!

「私もう行く!」

「どこ行くんですか?」

「部活!」

来た時と同様、勢いよくドアを開けた。

バーンって廊下に音が響いたくらいに。

「あ、じゃあ僕もっ」

「小鳩は部外者なんでおかえりください!!!」

キッと目に力を入れて振り返った後、自分だけ廊下に出てドアを閉めた。

後ろから“帰るだけですけど”って聞こえたけど知らないもんね!


知らないもんね!!


早足で家庭科室まで向かう。

ボルテージ上がり過ぎてどんどん進んじゃうから。

廊下がやたら寒いとか全然気にならないし!


気にならないし…、そんなの。


「……。」

足が止まっちゃった。

止まった足を見るように下を向いた。

ヤケドした薬指がジンジンする。

私なんでこんな一生懸命作ってるんだろう。

怪我までしてチョコレート作って…



まだ好きなのかな。




まだずっと好きなことやめられないかな。