探偵少女

「本当……あんただけは敵に回したくない」
「褒め言葉として受け取っておく」
「褒めてないし」


 友奈の言葉に鼻で笑って返すと、知由は記事を書くことに集中した。





 こんなにも長い一時間は、初めてだった。


 あの、三崎知由の悪魔的な微笑みが、頭から離れない。


 脳内に浮かぶたび、悪寒が走る。


 知由を直接見るまでは会社の人たちを見下していたが、あれは関わりたくない人種だと、今ならわかる。


 鷹宮はどこに向かうでもなく、生き急ぐ人たちの中を歩いていく。


 遅れる時間を現実に引き戻したのは、一本の電話だった。


 相手は、同期の坂本英介だ。


「肇、今どこにいる!?」


 応答を押し、スマホを耳に当てた瞬間に、慌てた声が聞こえてきた。


「英介、うるさいぞ」


 完全に気力を抜かれてしまった鷹宮からすれば、それは耳障りの悪いものだった。


「お前、なんでそんなに落ち着いてるんだ。今、ネットでお前の記事が炎上してるぞ」


 知由に燃やされた。


 そう理解するのは、難しくなかった。


「証拠もない状態で記事にするなって?」


 鷹宮は過去の自分を嘲笑する。


 しかし電話の向こうからは、困惑の声が聞こえる。


「いや、一般人を盗撮するヤバい奴だって 」