流れるように嘘が並べられ、晴真は目の前にいる人物は、三崎知由とは別人だとさえ感じた。


　しかし晴真と蒼空が戸惑っている中で、周りは知由の言葉を信じ、納得していた。


　知由に興味を持っていた人たちは、仕事に戻り始めている。


　結局、他人の言葉よりも本人の言葉が一番信用できるらしい。


　といっても、それはほとんど嘘であるため、晴真と蒼空は置いてけぼりになっているわけだが。


　知由の目的が見えず、二人は知由を凝視する。


　対して、知由は周りの視線を奪うほどの笑みを見せる。


「朝原さんに直接謝りたかったので、会えてよかったです」


　そして知由は、軽く頭を下げて、その場を去っていく。


　人通りの少ない場所に停まっている、白い軽自動車の後部座席ドアを開ける。


「おかえり、ちぃちゃん。朝原さんには謝れた？」


　助手席で待っていた雪兎は、バックミラー越しに知由を見る。


　知由は、足を組み、頬に手を当てて外を眺めている。


　雪兎の声に反応する気は、まるでないらしい。


　そんな知由を見て、雪兎は会話を諦め、車を発進させようと、ギアをドライブに入れる。


　安全確認をしたそのとき、蒼空が走ってくるのが見えた。